土佐堀川沿いの建築散歩
大阪中之島にある国立国際美術館へ続く、筑前橋を渡る途中に気になる建物があります。
派手ではないけれど存在感があり、惹きつけられるビル。横顔の落ち着いた緑のタイルが味わいある表情で、正面の白いタイルとのコントラストが端正な表情を見せています。連続した窓と一体になり、一見普通のようで、印象的なビルです。
その建築は、2016年に登録有形文化財に指定された「リバーサイドビル」。
1965(昭和40)年の竣工。東京大学の安田講堂、大阪では北御堂の設計で有名な岸田日出刀氏の作品とのこと。
リバーサイドビルディング
昭和40年(1965) RC造地上5階地下1階建
昭和中期のRC造事務所ビル。北区中之島に所在。肥後橋駅 近く、土佐堀川に南面して建つ横長平面の事務所建築。設計は 岸田日出刀。高速道路の構造を引用したと伝え、構造壁を集約し 、正背面に全長分の窓を配する明快な構成とする。 外壁全てに有田 タイルが使用され、特に東西の妻壁には、7種類のタイルを使用し モザイク状に飾られている。インターナショナルスタイルの 事務所建築の秀作。 平成28年に国の登録有形文化財に登録された。
かつてこの場所には「クラブ・リバーサイド」という社交場があり、政治家や役人、芸能人、スポーツ選手、作家なども集っていたそう。
「クラブ・リバーサイド」は、30年、高級フランス料理店「グリルリバーサイド」に併設する形でオープン。約260平方メートルほどのフロアにスタンドピアノや高級家具などを配置し、当時としてはモダンな雰囲気に装飾。飲食後に土佐堀川から舟に乗り、付近の大川や堂島川の周遊を楽しむ客もいたそう。当時は今より護岸が低く船で店まで乗りつけるお客さんもいたようで、まさに「水都大阪」。活気のある光景が目に浮かびます。
その後、北新地に高級飲食店などができた影響などで、惜しまれつつも38年に閉店。現在の「リバーサイドビル」に建て替えられたのだとか。
現在は懐かしさのある喫茶店や、蕎麦屋があるかと思えば、洗練されたコンセプトショップ、2階のコワーキングスペースなど、新しいものと古いものが同居し、様々な人が訪れる場所となっています。
堂島方面から三井ガーデンホテルを曲がると、現れるリバーサイドビル。
リバーサイドビル周辺
三井ガーデンホテルの角の室谷ビル。屋根のR形状がコーナー窓が目を惹きます。中は落ち着く喫茶店が営業されています。前の道にはかつてこの場所にあった医科大学前通の名がつけられています。
筑前橋は江戸時代の初期からあったそうですが、今の場所ではなかったそうです。中之島にあった筑前・黒田藩の蔵屋敷への便を図って架けられたと考えられており、当時は一般の人の通行は許されなかったとか。現在の橋は昭和7年完成のもの。
出典:『生きた建築大阪2』株式会社1408
産経新聞 昭和30年代の社交場「クラブ・リバーサイド」 2014/5/16
写真撮影:2022月9月28日